院長ブログ
2016年5月24日 火曜日
インターフェロンフリーの時代へ -前編-
C型肝炎の治療効果(持続的ウイルス排除率)が90%を超える時代になりました。
今から27年前
1989年にC型肝炎ウイルス(C100-3抗体)が発見され、
A型でもB型でもない肝炎(非A非B肝炎)であると
除外診断でしか診断できなかった肝炎が、
C型肝炎と診断できるようになりました。
C型肝炎ウイルスの抗体を測定し
C型肝炎ウイルス感染を証明できれば、
感染経路を特定することができ、
感染症としての予防法を考えることができます。
僕がC型肝炎の研究を始めたのは、
ちょうどこの頃でした。
非A非B肝炎は、輸血、麻薬注射、入れ墨などの、
血液によって感染することは分かっていましたが、
B型肝炎のように、母児感染があるのか、夫婦感染があるのか、
よく分かっていませんでした。
僕たちは、
ハイリスクグループ(Commercial Sex Workers・性病患者)と
C型肝炎ウイルス高侵淫地区における疫学調査を行い、
ハイリスクグループでの性行為感染は多いが(Am J Epidemiol 1992)、
夫婦感染の頻度は低く、母児感染の頻度も低いことを(JAMA 1995)、
明らかにしました。
おそらく、輸血や麻薬注射・入れ墨以外では、
過去の医療行為がC型肝炎の主な感染ルートであろうと............
感染症を撲滅させるためには、
感染経路を遮断しなければなりません。
血液製剤のC型肝炎ウイルス検査が始まり,
輸血によってC型肝炎ウイルスに感染する危険が減りました。
C型肝炎ウイルスは、B型肝炎と異なり、
ワクチンの開発は困難ですが、
キャリアー(持続感染者)の体内から
ウイルスを消滅させてしまうことができます。
C型肝炎の家族内感染の頻度は少ないため、
輸血を含む医療行為による新たな感染リスクがなくなり、
治療によって現在の感染者が治ってしまえば、
時代と共にC型肝炎はなくなってしまうはずです。
そのような状況下で、
C型肝炎ウイルスを消すことができる唯一の治療法である
インターフェロン治療が開始されました。
しかし、僕たちがC型肝炎の治療を始めた頃、
インターフェロン注射を行っても、
ウイルスの持続消失率はまだまだ低い値でした。
(後編へ続く)
(注) C型肝炎ウイルスが減ったという代替療法やサプリメントの宣伝が見受けられますが、ウイルスが一時的に減ってもあまり意味はありません。元から断たないとまた増えます。
C型肝炎の治療の目標は、あくまでも、ウイルスを完全に消滅させて、肝硬変、肝癌への道のりを断つことにあります。
治療終了24週後も、ウイルスが消失したままの場合に初めて、SVR(持続的ウイルス学的著効)と判定します。