アンチエイジングダイエット
2008年、世界的に権威ある医学専門誌New England Journal of Medicineに、低脂肪食と低糖質食と地中海食のダイエット効果を比較する論文が掲載されました。いずれも体重減少効果は認められましたが、減量効果が一番高かったのは、女性では地中海食(6.2kg減)、男性では低糖質食(4.9kg減)という結果でした。
低糖質食と地中海食、これらはいずれもインスリンの過剰な分泌を防ぐことにより体重減少と健康増進をめざす食事療法です。インスリンの過剰な分泌は、肥満の原因になるだけでなく、糖尿病、メタボ、動脈硬化などさまざまな病気の原因になります。肥満を防ぎアンチエイジングをめざすためには、インスリンの過剰分泌を防ぐことが重要です。
太る原因・痩せる原因
ヒトはどのようにして太ったり痩せたりするのでしょうか?
太るということはからだの脂肪の体積が増えるということです。
皮下脂肪や内臓脂肪はどのようにして増えたり減ったりするのでしょう?
私たちは、食事から摂取した糖質、脂質、たんぱく質をエネルギー(ATP)に変えて生きていますが、糖質の分解産物であるブドウ糖がエネルギー源の大部分を占めています。ブドウ糖は、エネルギーとして利用された後、余ってしまうと、飢餓に備えてインスリンによって中性脂肪に変えられ、脂肪細胞に蓄えられます。
インスリンは、血糖を下げるために分泌される唯一のホルモンですが、からだに脂肪をため込む肥満ホルモンでもあるのです。
太らないようにするには、糖質を摂りすぎないこと、急に血糖が上がらないようにすること(インスリンの分泌が増え過ぎないようにすること)が重要です。
私たちは、食事からのエネルギーが足りなくなると、肝臓や筋肉に蓄えられたグリコーゲンを分解してブドウ糖を作り(グリコーゲン分解)、さらに筋肉タンパク質が分解してできるアミノ酸などからブドウ糖を作り(糖新生)、最後に脂肪に蓄えられた脂肪酸を分解してケトン体を産生する(ケトン体回路)ことでエネルギーを生み出しています。肝臓や筋肉に蓄えられたエネルギーを使い切って初めてからだの脂肪が分解され始めるのです。
からだの脂肪を分解させてやせるには、食事からのエネルギーを消費し、さらに、からだに蓄えられていたグリコーゲンやアミノ酸からのエネルギーを使い切る必要があります。体内のブドウ糖は食後半日ほどで使い切り、その後数時間経つとケトン体回路がオンになります。ケトン体回路がオンになるとやせ始めるのです。
ケトジェニックダイエット
ケトジェニックダイエットとは
ケトジェニックダイエットとは、糖質摂取を制限することにより、ブドウ糖ではなく脂肪酸が分解されてできるケトン体をエネルギーとして利用できる体質を目指す食事療法です。ケトジェニックダイエットは、糖質制限をさらに進化させたケトン体の出現を指標にするダイエット法です。ケトジェニックダイエットを普及させるために日本ファンクショナルダイエット協会が設立され、ケトジェニックダイエットアドバイザー制度が設けられています。
ケトン体とは
ケトン体とは、脂肪が分解される過程でできる物質で、β-ヒドロキシ酪酸、アセト酢酸、アセトンの3つの物質の総称です。ケトン体は、体の中の利用できるブドウ糖が枯渇したときに利用されるエネルギー源ですが、糖尿病患者でインスリンが働かずブドウ糖を利用できない時に出現するため、これまではケトン体は悪者だと考えられてきました。
しかし、最近、ケトン体は脳のエネルギー源にもなっており、脳の認知機能を向上させ、長寿遺伝子Sirt3のスイッチを入れる働きがあることがわかってきました。
ケトジェニックダイエットの方法
ケトジェニックダイエットはめんどうなカロリー計算を行う必要がなく、糖質以外は自由に食べることができますので、誰もが比較的簡単に行えるダイエット法です。糖質依存の人々にとって、糖質制限は続けることが難しくリバウンドが心配だと思われがちですが、糖質制限を続けていると、からだがそれに慣れてしまい、糖質を摂りたくなくなる体質に変わってくるようです。糖質依存の食生活が改善されるため、ケトン食を中止した後も徐々に体重が減っていきます。
ケトジェニックダイエットにはさまざまなメリットがありますが、あくまで、短期間での効果です。長期的に見て、がんを含めた生活習慣病を減らす効果があるのか、寿命を延ばす効果があるのかは、まだよくわかっていません。最近ではむしろデメリットの方が多いという論文も発表されています。糖質を制限するということは、エネルギーに占める脂質やタンパク質の割合が増えるということになりますので、その弊害がないとは言いきれません。また、医学的知識がない人が厳重な糖質制限を行うと、生命に危険を及ぼすこともありますので、安易に糖質制限を行うのは良くありません。私たち日本人にとって、ケトジェニックダイエットが、長期的に見て健康長寿に良い影響を与えるのか否かは、これからの課題だと考えられます。
ケトジェニックダイエットの特徴
地中海式ダイエット
地中海沿岸の人々は心臓病が少なく、長寿であることが知られています。
地中海食とは、南イタリアやギリシアなどの地中海沿岸の人々の伝統的な食事で、穀物、芋類、野菜、果物、豆類、ナッツ類、オリーブオイル、ナチュラルチーズ、ヨーグルトを毎日食べ、魚介類、鶏肉、卵は週に数回、脂肪分の少ない赤肉は月に数回食べるのが特徴で、それに赤ワインが加わります。
地中海食の特徴の一つは、オリーブオイルと海の幸に代表される良質な脂質の摂取にあります。オリーブオイルは77%が一価不飽和脂肪酸のオレイン酸で、魚にはω3系多価不飽和脂肪酸であるEPAとDHAが含まれます。オリーブオイルには、しぼっただけの自然食品である、HDLを減らさずにLDLコレステロール下げる、多くの抗酸化物質を含む、酸化を受けにくい、熱に強いなどの良い点があります。魚に含まれるω3系脂肪酸には、血小板の働きを抑え(血をサラサラにし)、アレルギーを抑え、認知機能を改善する効果があります。
地中海食は、もともとインスリンの過剰な分泌を招きにくい食事内容ですので、地中海式ダイエットでは、あらためて糖質制限は行いません。したがって、空腹感との闘いがなく、リバウンドしにくいというメリットがあります。
地中海食の特徴
アンチエイジングダイエット
ケトジェニックダイエットは、短期間で確実に体重を落とすことができますので、早期に減量効果を実感することができ、ダイエットに対するモチベーションが高まります。
また、2~3週間厳重に糖質制限を行うことにより、糖質依存が改善され、糖質を摂りたくない体質に変化しますので、その後も無理なく糖質制限を続けることができます。
ただし、長期間にわたって厳重な糖質制限を続けることが健康や寿命に及ぼす影響についてはよくわかっておらず、リバウンドの恐れもありますので、糖質に依存しない体質になった後は、ゆるやかな糖質制限を続けていくのが良いと思います。
当院のすすめるアンチエイジングダイエット
脂質に関しては、オリーブオイルに含まれるオレイン酸(オメガ9系)、青魚に含まれるEPA、DHA(オメガ3系)などの不飽和脂肪酸を十分に摂り、動物性脂肪に含まれる飽和脂肪酸を控えることが大切です。また、不飽和脂肪酸でも、サラダ油に含まれるリノール酸(オメガ6系)の割合が増えるのはよくありません。最近、飽和脂肪酸の中でも、ココナッツオイルはからだに良いということが分かってきました。
赤肉の摂りすぎは動脈硬化やがんのリスクを高めますので、肉を中心とした高蛋白食を長期にわたって続けるのは良くありません。特に添加物が多く含まれた加工肉が危険です。また、余分なブドウ糖と蛋白質が結合してできたAGE(最終糖化産物)の蓄積はさまざまな疾患の原因となりますので、AGEが蓄積されない様な料理法、すなわち、焼いたり揚げたり、高温での調理を控えることも重要だと考えられます。
ケトジェニックダイエットの「ステーキを食べても痩せられる」というのは、あくまでも読者を引き付けるためのキャッチフレーズです。毎日ステーキばかり食べてもやせることはできますが、健康には良くありません。焦げたものを摂りすぎないこと、赤肉を摂りすぎないことはアンチエイジングダイエットの基本です。
食事の時間もダイエットの効果に影響します。私たちにはからだが健康的に機能するための体内時計(概日リズム=サーカディアンリズム)がありますので、毎日決まった時間に食事を摂ることが大切です。体内時計を正常に働かせて効果的にダイエットを行うには、朝食をとって体内時計を目覚めさせ、夜遅くには食べないようにすることが大切です。
運動をしなくても痩せることはできますが、アンチエイジングのためにはもちろん運動も必要です。運動にはカロリーを消費してやせるという効果は少ないですが、有酸素運動にはインスリンの働きを改善する(インスリンの分泌を減らす)効果があり、無酸素運動(筋力トレーニング)には基礎代謝量を増やす減量効果があります。過激な運動は必要ありません。歩くことから始めましょう。
理想的なダイエット法
世の中にはさまざまなダイエット法が氾濫していますが、次の条件を満たすダイエット法が理想的なダイエット法だと考えられます。
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